NEW RELEASE

2nd Mini Album『She is Feelin' Good』

2020.9.16(Wed) 2nd Mini Album『She is Feelin' Good』をリリース。本作は「楽曲」「ドラマ」「小説」の3つの方法で世界観を現しています。


楽曲

前作は「上京してきた一人の女性」がテーマでしたが、今回はその女性が東京で生活する中で変化した身の回りの環境や心情を表現しました。大人になる過程で不安や葛藤を抱えて生きる同世代の人たちに是非聴いてほしい作品になりました。

アレンジ面では作品全体のサウンドプロデューサーとして作曲家の水口浩次氏を迎え、より一層洗練された楽曲に仕上がりました!

1. スカイツリー

2. ウェイトレス

3. Unlucky Girl

4. フレンド

5. 町中華

6. Life Driving Club

7. Drink, Pray, Love!

2020.09.16 RELEASE

GUPC-0004 | ¥1,800+tax

【CD】Amazon.co.jp / TOWER RECORDS / HMV


ショートドラマ

作品の世界観をより深く楽しむことができるWebショートドラマ連載企画です。映像はゆいにしお自身が脚本・コンテ作成等を手掛け、今後公開予定のミュージックビデオともリンクした内容になっています!

主演は、ファッション雑誌等で活躍するモデル・中島侑香さんにお願いしました。また主人公の”相手役”として、TV ドラマやTikTok等で活躍する池田航さんにも出演いただきました。


小説

楽曲・ショートドラマの原作となった短編小説をゆいにしお自身が書きました。楽曲やドラマで描き切れなかったストーリーが楽しめます。この短編小説はブックレットになって『She is Feelin' Good』CD盤に封入されています。


小説の冒頭を公開します。続きが気になった方は、是非CD盤を手に入れてください!


1


改札を抜けると、あるに飛び込んだ。


「渋谷は変わる。あなたは?」


いきなりの問いかけに驚いたが、その看板は人ごみですぐに見えなくなる。長かった研修は先月で終わり、今日から本格的に配属先で働くことになった。研修先とは違うオフィスに向かうために渋谷に降り立ったのだが、渋谷の朝はこんなに身動きが取れないものだとは思わなかった。オフィスの場所を検索したグーグルマップも見えない。


東京は歩き続けるだけで疲弊してしまう。入社時から履いているパンプスは、慢性的な靴擦れを作る。パンプスどころか、シャツもスーツも、入社時から全く変わっていない。


「いい加減靴くらいは変えないとな」


給料日が来てからになるけど。


今日も無事に仕事を終えて、スマホを見る。いつものことだけど、連絡は誰からも入っていなかった。

“涙が出そうになる時は、空を見上げると止まる。”

この言葉は、上京前に友人が教えてくれたものだった。思いっきり夜空を見上げると、手元のスマホが震える。同期からの電話だった。


「ごめん今大丈夫?飲み会あるんだけど、よかったらこれないかな」


飲み会のメンバーは、同期だけでなくグループ会社の同年代の人たち、その友達、と多種多様だった。飲み会の最初は気前よく乾杯をし、近くにいる人たちと楽しく会話したものの、一度トイレで席を立つと、私の席は違う人が座っていた。仕方なく机のはしの唐揚げが一個だけ残された皿の前に座った。もう帰ろう、と終電を気にするそぶりで店の時計を見ようとする動線の途中、斜め右に座る男性と目があう。心が少し揺れたが、それ以上なにもできなかった。彼は、近くの席の人と楽しそうにしてはいたが、時折私の方に目線を送り、そのうちジョッキを持って近くにやって来た。


「乾杯」


飲み物を何も持っていなかったので、拳で彼のジョッキとエア乾杯をする。何か飲む、と彼はメニューを持って来てくれたので、ビールを注文した。


「いいね、俺もビール飲もうかな。生二つください」


彼はジョッキに残っていた酒を飲み干した。くっきりと浮かぶ喉仏が動く。飲み干すと、彼は一気に喋り始めた。


「俺の友達がグループ会社のやつなんだけど、俺は全く関係ないんだよね」

「何してるんですか?」

「広告代理店の一年目」

「すごいですね」


ビールが二つ運ばれて来て、私たちは改めて乾杯する。半分ほど飲んだところで「そろそろ締めまーす」という同期の声がした。居酒屋の外に出て、一本締めをする。帰りの電車の時間を調べていると、私の腕を軽く突かれた。顔を上げるとさっきの男性だった。


「俺らで二軒目行かない?」


私はもう少し遊んでいたかったし、明日は予定のない土曜日が待っていたので、彼について行くことにした。


彼の名前は加藤といい、渋谷の路地を器用にくぐり抜けて、カフェに案内してくれた。店内は普通のカフェだが、テラスはシーシャが吸えるようになっているカフェだった。シーシャを吸ったことがない、と伝えると、加藤くんは「俺のやつを吸えばいいよ」と言った。


シーシャを交互に吸いながら、渋谷の夜空を見上げる。星は1つも見えないけど、晴れてて綺麗だ。夜風が火照った肌を撫でて心地よい。


「そういえば終電大丈夫?どこ住んでるんだっけ」

「蔵前。部屋からスカイツリー見えるんだよね」

「まじで!めっちゃいいじゃん」


じゃあ俺の家とはちょっと遠いな、と加藤くんは白い煙をフーッと吐く。


「加藤くんはどこに住んでるの?」

「駒沢大学。でかい公園がある」

「大きい公園があるっていいね」

「今度遊びに来なよ」


シーシャは吸い尽くされて、程よい時間になって来たので、おひらきになった。シーシャに慣れていない私は、立ち上がると同時にめまいがし、加藤くんの肩に寄りかかる形になった。えっ大丈夫?家まで帰れる?という加藤くんの言葉も遠い。

数杯飲んだアルコールも相まって、クラクラして、今夜はこのままどうにかなってしまいたいという気持ちになった。


「送るよ」


私の気持ちを察したかのように、加藤くんは私の部屋まで連れてってくれた。


それから私たちは、暇を持て余した時間に会うようになった。特別趣味が合うとかではなかったけど気が合ったし、加藤くんといる時間は楽しかった。私の会いたい時に会えないことはよくあったけど、加藤くんが会いたい時はかならず会いにいった。ダーツやクラブに行ったり、飲みに行ったりする以外は、ほとんどお互いの部屋を行き来した。加藤くんが彼氏になる、当初はそう思っていたけれど、そんなにうまく行くもんじゃないだな、と学んだのはこの時が初めてだった。


「会いにきて」と入力しかけた手で削除ボタンを押して、「今から行くね」と入力し直して送信する。

私は思いっきり空を見上げた。


渋谷は変わる。わたしは少しずつ流されて変わっている。